時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

チベット問題に国際法学者は発言を

 チベット問題については、新聞やテレビなどでは、”チベット自治区”とか、”チベット暴動”といった表現が使われ、中国側のチベット領有を、あたかも当然のことのように見なしているようです。しかしながら、国際法から判断しますと、中国によるチベット領有は、明らかに”侵略”なのではないか、と思うのです。

 それにもかかわらず、国際法学者の方々が、チベット問題について、沈黙を守っていることは奇怪なことに思えてなりません。1950年の共産党人民解放軍の侵攻、1951年の「17条協定」の無効性、ダラムサラの亡命政府の法的位置づけなどなど、中国政府による”自治区”の主張を覆す法的な根拠はたくさんあるのですから。チベットを救うためには、まず始めに、中国によるチベット領有の法的根拠を崩すことが最も有効なのではないか、と思うのです。

 チベット問題を、中国の国内問題に矮小化してはなりません。もし、国際法学者が、この問題について判断を避けるとしましたら、”国際法はいらない”と言うに等しくなりましょう。ぜひ、国際法学者は、声を大にして、チベットの侵略性を主張していただきたいと思うのです。