時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国のナショナリズムは自己矛盾

 本日の新聞に、中国系米国人大学生の意見として、聖火リレーで高まっている中国のナショナリズムにも、中国人の権利や義務に対する市民意識を育てる効用がある、とする内容の寄稿が掲載されていました(産経新聞本日付朝刊)。しかしながら、共産党政権と区別された、中国人”ナショナリズム”にも、大きな自己矛盾があると思うのです。

 それは、チベット弾圧への批判に抵抗して”中国は一つ”のスローガンは、明らかに、他民族や他国の人権を犠牲にしていることです。つまり、中国人としての一つのアイデンティティーに結集することが、すなわち、武力侵攻をもって一方的に併合した諸国の人々の正当なる権利要求を、数の力で弾圧することにあるのならば、それは、利己的で、欺瞞に満ちたナショナリズムということになりましょう。

 健全なナショナリズムとは、相互尊重の原則の上に立脚するべきであって、自己中心のナショナリズムは、結局は、自己矛盾に陥るものです。南京大虐殺を声高に糾弾しながら、チベット弾圧を容認したのでは、誰もその声に耳を貸そうとはしないでしょう。もし、中国社会に、人権意識をもたらしたいと望むならば、少なくとも、チベット弾圧への抗議の声を封殺するような方法であってはならないと思うのです。

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