時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

革命の論理ではチベット侵略を正当化できない

 中国によるチベット侵略の擁護論として、当時のチベットには封建的な土地制度があって、地主から搾取を受ける農奴の人々が沢山いた、という主張が聞かれることがあります(中国側のプロパガンダかもしれませんが…)。つまり、人民解放軍は、チベット農奴を解放したのだ、という…。しかしながら、国家内部の土地制度の問題は、チベット侵略を正当化できないと思うのです。

 そもそも、土地所有の公有化を以て、統治権力の正当性を主張するのは、共産主義の論理です。この公有化のための手段とは、当然に暴力というものであって、武力によるチベット侵略もまた、この共産革命思想を周辺国に適用、あるいは、輸出したものとして理解することができます。もし、この共産革命の論理が、他国の領有や属国化を正当化するとしますと、如何なる国も、自国が中国に飲み込まれる可能性を持つことになりましょう。共産革命の論理とは、限界や境界を知らない帝国主義の論理へと衣替えしてしまうのです。

 日本国でも、第二次世界大戦後において、GHQによる農地改革政策が行われましたが、このことによって、日本国が、アメリカに併合されるということはありませんでした。サンフランシスコ条約によって主権を回復した以降にあっても、農地問題は、大きな政治的な争点にはなっていません。チベットもまた、主権を回復した後に、自らの力で、この問題を解決してゆけばよいのではないか、と思うのです。同じような問題を抱えた東欧諸国の政策も、参考となるかもしれません。独立問題と土地問題は別物であって、共産主義の論理によって、チベットが中国の支配と弾圧を受けるということは、断じてあってはならないと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願いいたします。
<A HREF="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</A>