時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

翻弄される日本国

 本日、北朝鮮が、拉致被害者を帰国させる可能性を示唆したとする報道がありましたが、その狙いは、一体どこにあるのでしょうか。少なくとも、北朝鮮が拉致行為を反省し、原状復帰として被害者を返すわけではないことはだけ確かです。過去の言動が”うそ”であることが自ら証明することになるにも拘わらず、あえて、拉致被害者に生存者がいることを明かしたことには、何らかの思惑があるに違いありません。

 もちろん、それは、北朝鮮の利益になることと、と考えて間違いはなさそうです。最も単純な憶測は、現在直面している飢餓や財政危機を打開するために、拉致事件を理由に経済制裁を継続している日本に対して、制裁解除、あるいは、拉致被害者帰国の見返りを求めている、とするものです。もっとも、報道によりますと、日本政府が公式に認定している拉致被害者ではないようですので、日本国の世論が、これを最終的な解決と見て北朝鮮よりに傾くとは思われません。

 事態がより複雑であるとしますと、アメリカの対北融和策が関与している可能性もあります。北朝鮮に対して、アメリカが、突然に親北政策に転じた背景には、中国包囲網の形成があるとも指摘されています。この場合、アメリカが、日本と北朝鮮との関係改善を進めるために、北朝鮮に対して拉致事件を解決するように圧力をかけたことになります。ただし、このシナリオでも、アメリカが、本気で北朝鮮を信頼に足る国家であると見做しているとしますと、あまりに楽観的に過ぎますし、米中対立が、金正日体制を認めざるを得ない程に、先鋭化しているとも見えません。

 どちらのシナリオにしましても、本当に恐ろしいことは、日本国の国民には、関係諸国の思惑が隠されているということです。アメリカによる中国包囲網論にしましても、その一方で、米中接近による日本の孤立化も囁かれてもいるのですから、状況判断の難しいことこの上ないのです。何れにしましても、過去に他国を騙した前歴を持つ北朝鮮の甘言に対しては、注意を怠ってはなりません。甘い言葉ほど、危ないものはないのですから。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
<A HREF="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</A>