時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

コメの生産割当量売買は”市場もどき”?

 昨日の新聞報道によりますと、政府の規制改革会議が取りまとめた第三次答申の中間取りまとめ案の中に、コメの生産割当量売買制度なるもの含まれている言います(7月1日付け日経新聞夕刊)。この制度、市場のメカニズムを取り入れることを目的としてるらしいのですが、その実態は、”市場もどき”に過ぎないのではないか、と思うのです。

 第一に、この制度は、排出量取引制度をコメの生産量管理制度に応用したことは、一目瞭然なのですが、総量規制を伴う取引制度は、むしろ、統制経済の延長線上にある手法として理解することができます。何故ならば、取引できる総量が予め決まっている場合には、それは、一種の数量カルテルか、市場分割カルテルの意味しか持たないからです。この制度にあっては、農家や事業者が、一定の生産量をゼロ・サム方式で取引しているだけで、市場における自由な価格競争も、新規市場参入による価格の低下も期待できません(減反の意図はコメ価格の維持にありますので・・・)。

 第二に、生産割当市場なるものに、金融機関が進出しますと、マネーゲームに陥る可能性があります。この懸念は、排出権取引市場において既に提起されており、むしろ、取引コストを押し上げる可能性さえあるのです。

 第三に、生産量拡大したい農家や事業者が生産割当を買い取ったとしても、実際に、農地が伴わなければ、生産を増やすことができません。全国各地の農家から生産量を買い取ったところで、それに見合った農地がなければ、無意味なのです。

 何れにしましても、この案には、いささか無理があるようです。むしろ、農業が、エネルギー産業やバイオ産業へと展開する可能性が見えてきた時代にあっては、減反制度そのものの見直しを図る方が、時代の要請にあっているのではないか、と思うのです。

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