時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍法改正を急いではいけない理由

 国籍法改正案に対する国民の不安の声が高まりを受けて、法務省では、親子関係の確認を厳格化する方針と伝えられています。しかしながら、やはり、この法改正は、あらゆる角度から見ても、拙速であると思うのです。

 マスメディアが大きく取り上げないこともあって、国民の中には本法案を知らない人々もおり、そのため、十分な議論がなされておりません。実際に、この法案が可決されますと、全ての国民に影響が及ぶことになるにもかかわらず、です。しかも、問題点の一つには、この法改正の根拠となった最高裁判所違憲判決が、派生的な重要問題を孕んでいることが挙げられます。最高裁違憲判決の要点は、嫡出子と婚外子との差別の撤廃にあるようですが、この判決の違憲理由をそのまま民法の戸籍に純粋に適用するとしますと、1.婚外子は、父の戸籍に入ることができる、2.嫡出子という身分を設けてはならない、3.婚外子の親権は、父母平等である、4.嫡出子と婚外子の相続分は平等とする・・・といった民法の大改正が行われなければならないことになるのです。もちろん、嫡出子と婚外子との差別を理由とした憲法訴訟が起こされれば、最高裁判所は、違憲判決を出さざるを得なくなるでしょう。最高裁判所が、国籍法と家族法を混合した結果、それは、ブーメランのように民法改正問題に跳ね返ってくるのです。

 果たして、日本国民は、この民法の大幅な改正に賛成するのでしょうか。そうして、最高裁判所には、国民の意向を無視して、家族の秩序を定める法律を改変する権限があるのでしょうか。国民の合意なきままに国籍法の改正を進めてしまいますと、やがて、国内に大きな混乱を招くと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
<A HREF="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</A>