時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”定額給付金”の心理的わだかまり

 定額給付金は、国民からも専門家からも、痛く評判のよろしくない政策のようです。エコノミストは、経済効果に懐疑的ですし、国民の多くもまた、この政策に心理的なわだかまりを感じています。それでは、この”心理的なわだかまり”は、どこから来るのでしょうか。

 それは、恐らく、”給付金”という名称が、あたかも政府から国民への”施し”のイメージを与えるからなのではないでしょうか。本来、国家の歳入は、国民や企業が働いて得た所得や収益の一部、あるいは、消費に際してその一部を、税金として納めたものです(埋蔵金も、公的な活動から生じたもので、政府のポケット・マネーではありません)。国庫とは、言わば、国民からの拠出金によって成り立っているわけですから、政府のものではないのです。今回支給される2兆円の給付金も、元をたどれば、国民の現在、あるいは、将来の負担です。ですから、給付金とは、本当は、還付金に過ぎないのです。

 それにも拘わらず、政府が、あたかも上からの”恩恵”という態度で臨みますと、受け取る側は、何とも言えない違和感と屈辱感を感じるものです。これが、国民に心理的なわだかまりを生んでいるとしますと、定額給付金ではなく、ストレートに減税を行った方がはるかに国民からの評価は高かったのではないかと思うのです。政府は、いらない屈辱感を国民に与えてはならず、抱かなくてもよい屈辱感を与えられた国民にとりましても、定額給付金は、後味の悪い政策となるのではないでしょうか。

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