時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ナイ氏の駐日大使就任がもたらす危機

 ジョセフ・ナイ氏の唱えた相互依存論とは、かつて国際政治学において一世を風靡したものです。しかしながら、よく考えてみますと、この説は、極めて奇妙で現実離れした学説であることに気付かされます。この説には、重大な見落としがあるのです。

 要約しますと、相互依存論とは、経済関係が深まるにつ入れて、双方の国家は相互依存関係となり、やがて、それが政治的な友好関係に至るとする主張です。しかしながら、そもそも、相互依存論は、歴史的な事実とは一致せず、特に、第二次世界大戦時における連合国と枢軸国との関係を説明していないという批判を浴びてきました。また、この説には、結果と原因を履き違えているという側面もあります。通常は、安全保障上の脅威が取り除かれてから、経済関係が強化されるのであって、その逆の証明は、未だになされていないのです。例えば、日中関係は、どうでしょうか。もし、相互依存論が正しければ、日中関係は、友好に向かうはずです。しかしながら、歴史が証明してきましたように、経済大国は、得てして軍事力を強化し、覇権を求めるものであり、中国もまた、急激な経済成長が、軍拡を後押ししているのです。空母の建設や東シナ海でのガス田の一方的採掘など、日本国にとって、今や、中国は、安全保障上の最大の脅威です。つまり、相互依存論とは、期待に基づく一種の”理想論”なのです。

 もし、ナイ氏が、相互依存論やソフト・パワー論という”思想”に基づいて政策を立案するとしますと、日本国は、内側からもさらなる脅威にさらされることになるかもしれません。ナイ氏の駐日大使就任は、日本国にとって望ましいとは思えないのです。

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