時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

外国人参政権と国家に対する義務

 国家に対する義務、この大仰な表現に、冷やかな視線を送る方々も少なくはないかもしれません。しかしながら、外国人参政権の問題を考えるに際して、実のところ、この問題は、避けて通れないように思うのです。

 国際法における国家の主権には、領域主権と対人主権とがあり、外国人の場合には、居住国の領域主権が及ぶ一方で、出身国の対人主権も及びます。つまり、一人の人に対して、二重の主権が及ぶのです。このことは、国家に対する忠誠が、分裂する可能性を示しています。かりに、居住国と国籍国との間に対立が生じた場合、外国人は、自らの忠誠心の対象、つまり、義務を果たすべき対象をどちらにするのか、一方の国を選ばざるを得なくなります。そうして、国際法のルールにあっては、外国人には、当然に、国籍国の方を選ぶことが許されているのです(ただし、領域内にある限りは、領域主権を持つ居住国の措置に従う義務はある・・・)。

 このように考えますと、外国人参政権を認めることは、外国の政府に対して法的な義務を負う人々に、政治参加の権利を与えることを意味しています。さらに、共産党が主張しているように、被参政権まで拡大しますと、自国の政治権力を持つ政治家が、外国に対して法的な義務を負っているという、極めて危うい状況が現出することになるのです。二者択一が迫られる状況が発生した場合、外国人には、法的にも国籍国を優先することが許されていることを考えますと、アジア情勢が不穏な中、外国人参への政権付与には慎重であるべきと思うのです。

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