時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

時を超えて伝わる日本国建国の理念

 すべての国には建国に至る歴史があり、また、建国神話が語り伝えられているものです。えてしてそれらは、武力で国を打ち立てた英雄や、強大な権力を握った征服王として描かれることが少なくなく、国の創始者の偉大さが強調されています。それでは、日本国の場合はどうかと申しますと、いささか趣が違っているように思うのです。

 それでは、どのように違っているのかと申しますと、建国とは終着点ではなく出発点であり、”良き国をつくろう”とする意識が強く表現されていると思うのです。そもそも、天孫である瓊瓊杵尊高天原より降臨されるに際し、託された使命は、良き世をこの地にもたらすことであったと理解することができます(『「記紀」はいかにして成立したか』によると、日本書紀古事記では、立場の違いが見られるようですが・・・*)。決して、民を強圧的に支配し、搾取せよ、というものではなく、そこには、無私の心で民を慈しみ、天の恩恵が地の隅々まで行き亘るように祈る天皇の原初的な姿を見て取ることができます。

 後に神武天皇として即位される神日本磐余尊は、皇祖から託された使命を思い起こされ、日向を出立し、東征へと向かわれます。橿原の宮で即位され後には、天孫としての祭祀をもって有力氏族を纏められ、国家と国民の統合の基礎を築かれました。本日、紀元2669年を迎えるにあたり、建国の理念が、時を超えて今日の日本国に伝えられ、さらに後世へと繋がれてゆくことを願うのです。

*倉西裕子 『「記紀」はいかにして成立したか ―「天」の史書と「地」の史書』、講談社選書メチエ、2004年。

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