時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国がアジア単一通貨圏に消極的な理由

 近年、将来におけるアジア単一通貨圏の形成が、議論されてきました。昨日発表された「チェンマイ・イニシアチヴ」の外貨融通枠の拡大もその一環なのでしょうが、この構想には、いささか無理があるように思えるのです。

 数ある理由のうち、最大の根拠は中国の存在です。中国は、元安政策を”てこ”にした輸出拡大による急激な経済発展を続けてきました。もし、東アジアで通貨統合を行うとしますと、高い独立性を保障した共通の中央銀行が設立され、金融政策と為替政策は共通化されることになります。このことは、中国は、独自の戦略として、為替政策を実施する権限を放棄しなければならないことを意味しているのです。つまり、中国が、元安による優位性を放棄しなければ、アジア単一通貨圏をつくることはできないのです。

 現状において、中央銀行である中国人民銀行は、連邦型のFRBをモデルに制度改革が行われたと言われてはいますが、政策決定において、どこまで政府からの独立性が保障されているのか疑わしいところです。共産主義とは、政治・経済一元論に立脚した思想ですし、「世界の工場」の地位と通貨統合とが二者択一であるとしますと、中国は、前者を選ぶのではないか、と予測するのです。そうしてこのことは、我が国が、将来の通貨統合を構想して政策決定を行うことの危うさをも、示唆していると思われるのです。

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