時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国はアメリカとIMFのどちらに貸すべきであったのか

 中川前財務大臣は、保守派の政治家としても知られており、日頃より日本国の国益を守ることを基本に据えて行動されてこられた政治家でした。ところが、今回の辞任事件を切欠として、中川前財務大臣が、アメリカからの救済依頼を断って、IMFへの1000億ドル(約9兆円)の融資を決定したことを評価する意見があることを知り、国益とは何か、という問題について考え込んでしまいました。

 評価されている理由は、(1)アメリカへの融資ですと踏み倒される可能性があるが、IMFであれば、確実に資金の回収ができる、(2)アメリカの救済よりも、新興国の救済を優先すべき、(3)アメリカの将来性には期待が持てず、ドルの暴落などにより損失を被る・・・などです。つまり、アメリカに資金を貸すと戻っこないのだから、1000億ドル=国益を守ったという評価になります。

 その一方で、IMFを選ぶことによるリスクもまた否定できないものがあります。例えば、(1)日米関係を冷却化させる、(2)日本国に代わって中国が米債の購入を増やせば、アメリカの対中傾斜が強まる、(3)アメリカ経済が破綻すれば、結局、すべての諸国の不況がさらに深刻化する・・・といったリスクです。つまり、日本国は、国際社会にあって、孤立化する可能性があるのです。もし、このリスクが現実化すれば、あるいは、アメリカ国債の購入を選んだほうが賢明であったのかもしれません。

 現在までのところ、IMFの融資によって経済危機が救われたという報告もなく、1000億ドルが経済危機の克服のために有効に使われたという確証もありません(IMFの手段は政府に対する外貨の貸付が中心なので・・・)。また、IMFの融資が発表された時には、アメリカとIMFという選択肢の中での決定であったことを、国民の多くは知しりませんでした。今となって考えてみますと、日本国の国益、ならびに、世界大の金融危機を終息させるためには、よりオープンな議論を行ったうえで政策を決定しても遅くはなかったも思うのです。

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