時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

経済モデルの過信は禁物

 何故、いわゆるケインズ主義に基づく財政拡大策は失敗したのか。もし、経済モデルが100%絶対に正しいとするならば、どのような酷い不況に陥ろうとも、どの国も、労せずして景気を回復させることができるはずです。しかしながら、実際には、そう簡単には物事は進まなかったのです。

 ところで、政府紙幣の発行を支持する根拠として、政府支出+民間投資支出+貿易黒字>貯蓄+税収の式が成り立てば景気回復となる、とする説が唱えられています。この式が正しければ、政府支出を増やすことはイコール景気回復ということになります。しかしながら、貯蓄の減少は、新たな成長分野への民間投資を減少させますし、政府支出に収益性がないとしますと、第二ラウンドでは経済全体のパイは減少します。つまり、この政策を長期にわたって続けますと、経済は、負のスパイラルに入ってゆくのです。

 そもそも、この式では、左辺と右辺との連鎖的なつながりが無視されており、市場のメカニズムを正確に描き出してはいません。経済モデルとは、過去のデータや事例を分析することによって、ある特定の条件下にあっては、こういうこともある、ということを数学的に説明しているに過ぎないのです。つまり、すべての時代や状況に当てはまるわけではないのです。経済モデルを絶対視して政策を立案しますと、景気回復どころか、さらに経済を悪化させてしまうこともありますので、十分な注意が必要であると思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
<A HREF="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</A>