時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

不法在留のフィリピン人一家が提起する問題

 不法滞在で日本国からの退去を求められているフィリピン人一家の行方は、日本国においても多くの国民の関心を集めているようです。法務省は、中学生のお子さんを一人残すのか、それとも、一家全員で帰国するかの選択を迫る方針とのことですが、このケースには、考えるべき点がたくさんあるようです。

(1)子の出産による不法滞在の合法化
 今回は、両親の在留許可は否定されました。もし、両親を含めた一家全員の滞在が認められていたとしますと、子の出産が、不法滞在の合法化の手段として使われる可能性がありました。

(2)一人で在留した場合の対応
 おそらく、法務省は、一家全員での帰国を予測していると思われます。しかしながら、もし、お子さんが一人で残る選択をしたとしましたら、どうするのでしょうか。しかも、これが前例となりますと、一人で福祉施設に預けられる外国人の子供達が増加するかもしれません(両親に対する道徳的な非難は免れませんが・・・)。

(3)言語のダブル・スタンダード
 フィリピン人の両親は、お子さんがフィリピン語を話せないことを理由として、特別滞在許可を求めたと言います。しかしながら、両親自身は、日本語を話せないにも拘わらず、フィリピンより渡航して日本国に滞在しているわけですから、この言い分には、自己矛盾があります。

(4)法治主義の閑却
 日本国における滞在を求めるお子さんの姿は、多くの方々の同情を集めました。しかしながら、その一方で、同情心が法より優先するとなりますと、法治国家としての日本国の根底が揺らぐことになります。

(5)フィリピンの立場がない・・・
 フィリピン人を両親として生まれたお子さんが、涙ながらにフィリピンへの帰国を拒んだとしますと、この姿は、フィリピンの方々にとりましては、大変、ショックなことなのではないか、とも想像します。
母国を思い切り否定しているのですから、この点も考えさせられます。

 マスコミは、常々、同情論からこうした事件を報じますが、同情論に隠されている問題についても触れる必要があると思うのです。よく議論しませんと、物事の判断はできないのではないでしょうか。

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