時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

不法滞在のフィリピン人一家―親子同居の権利は法に優る?

 不法滞在で入国したフィリピン人一家は、お子さんだけを日本国に残して両親は本国に帰るという結論に達したと報じられております。法務省の措置については、マスコミを中心に、三人一緒に日本国での滞在を許すべし、という意見も聞かれましたが、この事件は、親子同居と権利の問題をも提起するものでした。

 そもそもこの事件には矛盾点が多いのですが、親子の同居についても、大きな矛盾点があります。それは、日本国の滞在を主張する時には、最大限に親子が一緒に住む権利を主張しながら、実際に、強制送還が決定されると、手のひらを返したように、お子さんだけを残すという選択を行ったことです。日本人であっても、親の転勤などで、否応なく生まれ育った土地を離れねばならなくなったり、また、父親のみが単身赴任するケースもあります。日本国の子供達は、どのようなケースであっても、それを運命として受け入れて我慢しているのです。中には、父親の赴任に伴って、言葉が全く分からない外国に住まなければならないこともあります。日本人の子供達は、タガログ語がしゃべれなくても、親の都合で、フィリピンに行かなくてはならないこともあるのです。この点を考えますと、フィリピン人の一家が、法を歪めてまで滞在を求めることは、行き過ぎた権利の主張のように思えるのです。

 自己の権利ばかりを主張していますと、周りが見えなくなることもあります。日本国に残られたお子さんは、フィリピンが母国なのですから、いつかフィリピンを訪れ、自己の主張を深く考えてみることも大切なように思います。もしかしますと、フィリピンの親族の方々が、暖かく迎えてくださるかもしれませんし、自分と同じ年代のフィリピンの中学生の現状を知ることで、思うところがあるかもしれません。ヒステリックにフィリピンを否定しますと、フィリピンの方々の心を傷つけることも知るべきことでしょう。まだ中学生なのですから、フィリピンを知ることで、多面的な見方ができるようになるのではないでしょうか。

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