時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”複眼思考”とは野蛮への道か?

 本日、日経新聞の朝刊の一面に”複眼思考への試練”という記事が掲載されておりました。この記事の趣旨は、異質の者を排除する”単眼思考”の外交は時代遅れであり、多様性を包摂する”複眼思考”こそ、来るべき時代の外交のあり方であることを主張することにあるようです。

 記事で述べている”単眼思考”と”複眼思考”には、日米同盟と対中外交、さらには、民主主義と一党独裁の対比が含意されており、”複眼思考”とは、尽き詰めて考えてみますと、アメリカとは距離を置き、一党独裁体制を維持している中国との関係を強化せよ、ということになりそうです。つまり、民主主義や自由という価値に拘ることはなく、独裁であれ、覇権主義であれ、何であれ、国際社会は受け入れるべきと言うことになります。しかしながら、それは、本当に来るべき時代に相応しい国際秩序なのでしょうか。国際法の無視がまかり通り、弾圧が黙認され、重大な情報が隠蔽され、力と脅しが物を言うるような国際社会が、望ましい人類の未来とは思えません。人類の進歩どころか、それは、野蛮な時代への逆戻りなのではないでしょうか。

 野蛮との闘いを止めてしまった人類は、退化するしか道はありません。多極主義や”複眼思考”に野蛮の容認が含まれていることを、より多くの人々が気付き、如何にして野蛮を抑止するのかということを真剣に考えるべきと思うのです。

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