時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

同心円モデルは華夷秩序に変じる?

 日経新聞の朝刊には”世界この先”という欄があり、本日の三面には、日本国際交流センター・シニア・フェローの田中均氏が、同心円モデルを提唱されておりました。この同心円モデルとは、日米欧が中心となって、オピニオン・リーダーとしての重い責任を担い、新興国などの「外縁国」を取り込んでゆこうとする考え方です(コントロール?)。しかしながら、現実を見てみますと、この同心円モデルは、いとも簡単に華夷秩序に変じてしまうリスクがあるのではないでしょうか。

 同心円モデルも華夷秩序も、世界を中心部と外縁部によって構成されると見なすことで共通しております。華夷秩序では、中華帝国が中心に位置しており、周辺諸国は中心に従属する蛮夷の国となります。田中氏は、同心円の中心には日米欧が位置しつづけることに疑いを抱いていないようですが、この優越的な地位は、必ずしも永続的に保証されているわけではありません。何故ならば、民主主義や自由といった価値観を抜きにしますと、軍事力と経済力に優る国が、この中心の座を手にすると考える方が自然であるからです。しかも、「外縁国」の発言力は国際機関でも高まっており、それはやがて、現代の中心国の発言力を凌駕することになるかもしれません。

 結局、気付いた時には、同心円モデルは、世界大に拡大した華夷秩序に変じており、革命を信じる中国にとりましては、周辺が中心を乗っ取るのですから、これ程、自らのイデオロギーにも合致した痛快な展開はないかもしれません。このリスクを考えますと、国際社会を同心円モデルとして描くことは、自らの首を絞め、政策の選択肢を狭めることになるかもしれないと思うのです。

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