時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

裁判員制度―今後の検証こそ大事

 司法制度の制度設計は、人が人を裁かなければならない、という点において、他の分野よりも宿命的な難しさを背負っています。裁判員制度もそのひとつの試みなのでしょうが、裁判員制度を評価するには、今後の検証こそ大事と思うのです。

 裁判員制度の導入が積極的に支持されるためには、被告、原告、裁判員、国民のそれぞれが、以前の制度よりも優れた制度であるとする評価する必要があります。このために、検証すべき最低限の項目として、以下の点を挙げることができます。

(1)被告・原告の控訴率の変化
 被告・原告双方とも裁判員制度による判決に納得していれば控訴率は低下します。もし、控訴率が上昇すれば、それは、判決に対する不満の表れと判断することができます。

(2)裁判員への判決の影響
 裁判員を引き受けたことで、社会生活において何らかの影響を受けたかどうか、追跡調査を行う必要があります。昨日のブログでも指摘しましたように、被告人、あるいは、原告が何らかの組織に所属している場合には、有形無形の嫌がらせや、社会的に不利益を与えるような行為の被害者になる可能性があります。

(3)国民の支持率
 裁判員制度の導入に当たっては、この制度に対する国民の支持率が低く、世論調査では、裁判員を引き受けたくないと言う人々が過半数を越しています。制度導入後にあっては、もし、裁判員制度による判決の方が、はるかに妥当な判決であると認識した場合には、この支持率は上昇するでしょうし、反対に、裁判員制度による判決は職業裁判官と変わらない、あるいは、より妥当性や公平性を欠いていると見なされた場合には、支持率は低下することになりましょう。

 裁判員制度の導入については、当初から問題点が数多く指摘されており、行く先が心配されるところですが、まずは、本制度の丁寧な検証を行うことで、司法制度のあり方を将来に向けて考えてゆくべきと思うのです。

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