時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

経済発展が素直に喜べない米中時代

 安価な労働力を武器として、中国は一気に”世界の工場”のみならず”世界の銀行”に駆け上がり、さらには、”世界の中国”という頂点を目指しそうな勢いです。アメリカもまた、この路線を容認する気配があり、弾圧体質の隣国の台頭は、我が国にとりましても深刻な脅威となりそうです。

 かつて、ソ連邦という共産主義国と対峙していたアメリカの姿を思い起こしますと、驚愕の様変わりなのですが、米ソ対立の冷戦時代と現代とでは、経済的な繁栄に対する感じ方に大きな違いがあります。冷戦時代には、物質的な豊かさは、自由を尊ぶ西側諸個国のシステムの優位性の証明であり、また、市場経済のメカニズムは、計画経済を採用していたソ連邦を引き離す原動力でもありました。ところが、現在では、中国が安価な労働力という強大な”競争力”を武器に市場に参入してきたことにより、経済的な繁栄は、一党独裁体制の国を増長させ、軍事的にも強大化させるという冷戦時代とは全く逆の現象が出現することになったのです。このため、経済が繁栄すればするほど、民主主義や自由といった価値が蝕まれるという恐れが生じることになりました。つまり、経済発展が、素直に喜べない時代となったのです。

 ソ連邦時代には存在しなかったこの問題は、将来、米中時代が到来することになれば、さらに深刻さを増してゆくことになりましょう。中国の暴虐な振る舞いが目立つようになった今、現代という時代が、冷戦時代とは異質の問題を抱えていることを真剣に考える時期を迎えているように思われるのです。

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