時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

東アジア共通通貨は無理では?

 民主党鳩山代表は、東アジアにおける共通通貨を発行する構想を打ち上げるようです。10年以内の実現を目指すそうなのですが、EUの経験から判断しましても、この構想の実現は、かなり難しいと考えられるのです。

 理由はたくさんあるのですが、まず、各国の国益が一致しないということを挙げることができます。中国は、これまで人民元の為替レートを意図的に元安に誘導することで、グローバル市場において圧倒的な輸出競争力を維持してきました。つまり、対外通貨政策の権限を握っていたからこそ、この政策が実現できたのです。もし、東アジアで共通通貨を発行するとすれば、共通の中央銀行に、この権限を移譲しなければなりません。外貨準備不足で慢性的な通貨危機を抱える韓国にとりましては、通貨の安定性がメリットとなるかもしれませんが、それでも、ウォン安を武器に輸出競争力を維持してきたことに鑑みますと、通貨統合がプラスと出るかマイナスと出るかは不明です。日本国政府もまた、莫大な財政赤字を抱えている段階で通貨統合に踏み出すことは、”最後の手段”、つまり、国債中央銀行引き受けという手法を放棄することを意味しますので、この決断ができるとも思えません(ユーロ導入国には、厳格な財政規律が課せられている)。

 東アジア通貨圏に加わるとみられるこれらの主要国だけをみましても、早々に条件が整い、合意に達するとは思えません。経済レベルがより均質であった欧州諸国でも、ユーロ誕生に至るまで、20年以上にわたって為替の変動を調整するEMSを運営してきた実績があります。これらの点を考えますと、やはり、東アジアの共通通貨案は、理想論から離れて、具体的な議論となった時点で頓挫してしまいそうなのです。

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