時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

地方参政権―センター試験の問題は”踏み絵”か?

 平成7年2月に出された外国人の参政権に関する最高裁判所の判決は、今日に至るまで、我が国の政治に大きな混乱をもたらすことになりました。何故ならば、この判決内容には、重大な論理矛盾があったからです。

 問題の判決の内容とは、簡単にまとめますと、(1)憲法第93条に記されている”地方自治体の住民”とは、憲法第15条の国民であるが、(2)憲法第93条については、立法措置を講じて永住外国人参政権を付与することは、憲法で禁止されていない、というものです。(1)と(2)は、明らかに両立せず、地方自治体の住民が国民を意味する限り、地方参政権の付与は憲法違反になる、とするのが、本来の正しい論理展開です。この判決は、論理矛盾を誤魔化していると言わざるを得ないのです。この結果、憲法違反であっても、法律を制定すれば合憲になる、という、とんでもない結論が導かれてしまいました。もし、このようなことが許されれば、法律が憲法を超えることになり、憲法体制は崩壊します(ナチス政権は、この方法で独裁体制を築いた・・・)。

 昨日実施されたセンター試験では、「最高裁は外国人の地方参政権の付与に対して違憲ではないと判断した」という文章には誤りはないとしたようです。この判決に潜む論理矛盾とその危険性を考慮すれば、センター試験の設問としてはあまりに不適切です。センター試験の問題の制作者が、異論があることを知らなかったとは思えず(現代社会の専門家にとっては周知の議論・・・)、この設問には、受験生を特定の方向に誘導しようとする、政治的な意図さえ見え隠れしています。地方参政権に反対の意見をもつ受講生が不利となり、また、”踏み絵”を踏ませているとしますと、試験と言う名の思想統制ともとられかねません。この設問の点数は、ノーカウントとすべきなのではないでしょうか。

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