時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

朝青竜引退―異文化相互理解の光と影

 昨日のテレビニュースで、モンゴルに帰国した元横綱の朝青竜が、記者会見の席で日本人記者に対してけんもほろろな態度で質問への回答を拒否している姿が報じられていました。この会見を見て感じたことは、大相撲の国際化は、諮らずして異文化相互理解の影の部分を浮き彫りにしたのではないかと、ということです。

 マスコミなどでは、常々、異なる文化の間の摩擦は、相互に理解することで違いを乗り越えて友好関係に至るとするステレオ・タイプの見解を流し続けてきました。しかしながら、伝統に裏打ちされた国技としての大相撲は、相互理解という方法から最も遠い世界であったように思うのです。何故ならば、相互理解の結果として、大相撲にモンゴル相撲を取り入れて、折衷させることはできないからです。もし、両者を融合させるとしますと、それはもう、大相撲ではなくなります。伝統に根ざした土俵では、否が応でも、外国人力士は、大相撲のしきたりに合わせざるを得ないのです。

 もちろん、日本相撲協会は、外国人力士を平等に評価し、横綱という最高位を与えたのですから、そこには外国人差別はなかったはずです。にもかかわらず、朝青竜が、モンゴル流?が通らなかったことを理由として、日本国に対して非友好的な感情を抱いているとしますと、そこには、明らかなる相互理解の限界が見えるのです。横綱という最高位をもって遇しながら、反日となってしまう現実は、異文化間の交流は、友好をもたらすこともあれば、険悪な関係の原因ともなるという危うさを示しているように思うのです。

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