時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

上海万博開会式から読み解く中国という国

 昨日、中国で上海万博の開会式あったということで、新聞の紙面には、その様子が写真に大きく掲載されていました。この写真から、わずかなりとも、中国という国を読み解くことができそうです。

 国際的な祭典が開催される場合、開会式の演出は、その国の国柄を表わすものです。中国という国は、”帝国型”の多民族国家であるため、北京オリンピックと同様に、民族衣装の人々を登場させることで、まずは、国内の民族団結を表現したいようです。その一方で、今回の万博では、北京オリンピックほど、歴代中国王朝の歴史的偉業は強調されてはいないようです。その代わりに、北朝鮮のマス・ゲームを想起させるような、同一のコスチュームをまとい、同じようなメークをし、髪型も統一させた女性たちが出演しており、どこか、カルト的な雰囲気が漂わせていました。写真ではあれ、全く同一人物にしか見えないところが、恐ろしいところです。

 中国は、この万博をチャンスに、自国の国威を発揚したいようですが、この写真を見る限りでは、むしろ、中国の特異性が目立っています。この違和感は、おそらく、国際社会に向けて中国の存在感をアピールしながら、他の国の人々の目には、自らがどのように映るかを、全く考慮していないことによるのかもしれません。上海万博開会式の一枚の写真から、中華思想の系譜をひく自国中心主義と、歴史や伝統を否定する共産主義が入り混じった、奇妙で矛盾した大国、中国の姿が垣間見えるのです。

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