時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

北朝鮮による武力攻撃―国連軍は動くのか

 1953年7月以来、朝鮮戦争は休戦状態にあります。昨日、北朝鮮が休戦協定を破って韓国側に砲撃を加えたことで、朝鮮戦争の火ぶたが再び切られるシナリオが、俄かに現実味を帯びてきました。

 両国が交戦状態に至った場合、韓国側において闘う軍隊には、幾つかのシナリオがあります。直接攻撃を受けた韓国の軍隊による防衛は当然として、朝鮮戦争の再発となりますと、まず、国連軍が再編成される可能性があります。昨日の砲撃戦を受けて、対応を協議するために国連の安保理が開催されるそうですが、朝鮮戦争当時の国連軍が、安保理でのソ連邦代表の欠席という幸運によって実現したことを考えますと、北朝鮮の行為が安保理ですんなりと侵略と認定され、国連軍が再結成されるとも思えません。しかも、現在、安保理常任理事国となっている中国は、当時は国連にさえ加盟しておらず、朝鮮戦争では、北朝鮮の側に立って参戦しているのです。となりますと、韓国が単独で防衛できず、援軍を要するならば、米韓相互防衛条約に基づいて、米軍が出動する公算が最も高いと言えそうです。

 朝鮮戦争が、いわば米ソのみならず、米中の代理戦争の様相を呈していたことは、今日なお、国連という枠組みの外で、米中間の緊張が高まる可能性を示唆しています。中華人民共和国が国連に加盟し、安保理常任理事国となったのは、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた1953年7月よりずっと後の、1971年10月のことなのですから。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
<a href="https://blog.with2.net/in.php?626231">人気ブログランキングへ</a>