時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

パナソニック電池事業売却―中国独禁法の戦慄

 本日の新聞に、パナソニックが車用ニッケル水素電池事業を中国社に売却するとの記事が掲載されてきました。その理由は、中国の独禁法当局による分割命令に従ったらしいのですが、この売却、大問題なのではないかと思うのです。

 中国で独禁法が施行されたのは、2008年8月1日のことであり、執行が始まって日も浅く、その運用が危惧されてもいました。中国独禁法では、一社のシェアが50%に達すると市場支配的地位と認定されるそうですので、分割を求められたとしますと、パナソニックのシェアはこの基準に達していたことになります。加えて、中国当局は、分割に際して、中国企業への売却を求めたらしく、結果として、事業を買い取った中国企業が、パナソニックの日本国内の工場で日本の技術で生産することになりました。市場シェアについては確認のしようもありませんが、少なくとも、企業に対して売却先に条件を付すことは営業の自由を制限する行為ですし、市場経済の原則にも反しています。

 これが前例となりますと、日本企業は、一気に中国市場のシェアと技術力の両者を失う可能性があります。何故ならば、競争当局が、有望な日本企業に対して分割命令を下し、中国企業への売却しか許可しなければよいのですから。日本国政府は、この事態に対して、またもや傍観を決め込むのでしょうか。

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