時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

人権侵害救済法案はパリ原則の偏向解釈では

 
 民主党は、次期国会に提出を予定しているとされる人権侵害救済案の根拠を、1993年に採択された「国内機構の地位に関する原則(パリ原則)」求めています。しかしながら、パリ原則と民主党の人権救済法案とでは、以下のような著しい隔たりがあります。

(1)パリ原則の設立の目的は、警察や出入国管理当局による”不適正な待遇”、つまり、行政機関による差別行為をなくすことにありますが、人権救済法案の目的は、私的領域にまで踏み込んで差別をなくすことにあります。

(2)パリ原則では、人権委員会のメンバーは、(a)人権と人種差別と闘う努力とを責務とするNGO,労働組合,例えば弁護士会,医師会,ジャーナリスト協会,学術会議のような関係社会組織や専門家組織 (b)哲学又は宗教思想の潮流 (c)大学及び資格を有する専門家 (d)議会 (e)政府の省庁 とされており、多様性を確保するよう求めています。一方、我が国の人権擁護法案では、こうした規定はなく、人権擁護団体のみならず、実際に人権侵害の被害を受けた人もメンバーに入れるよう、努力規定が置かれています。つまり、被害者への偏りが強いのです。

(3)また、パリ原則では、外国人を委員に就任すべきとは定められておりませんが、民主党案では、国籍要件が、故意に外されています。

 パリ原則そのものにも問題がないわけではありませんが、民主党の法案は、パリ原則を拡大解釈しており、人権委員会による人権侵害や言論弾圧の可能性を残しています。外国人労働者に対する賃金や待遇の平等は、別途、法律を制定すべきですし、虐待やハラスメントなど、現行の刑法で対応できる部分もあります。独立的な立場を保障され、かつ、広範な権力を付与された人権委員会の出現は、恐怖政治の始まりであると思うのです。

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