時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

草案なき太平洋憲章

 野田政権は、環太平洋における新たな経済・安全保障政策のヴィジョンとして、”太平洋憲章”の枠組みの構築を目指すと報じられています。ところが、不思議なことに、肝心の草案が公表されていないのです。

 ”太平洋憲章”というネーミングからは、第二次世界大戦に際して米英間で締結された”大西洋憲章英米共同宣言)”を思い起こすのですが、前者は、日米同盟を米英関係に置き換えた内容というわけでもなさそうです。しかも、アメリカとの共同提案なのか、それとも、日本国政府独自の案なのか、提案国ついても不明です。中国やロシアを含めた経済協力や紛争解決の仕組みを備えた枠組みと説明されていますが、もし、紛争解決の仕組みを新設するならば、詳細かつ具体的な記述を要するはずです(領土問題なども平和裏に解決できる仕組み…)。

 日本国政府が、こうしたヴィジョンを打ち出すならば、その内容を同時に公表しなければ、インパクトも意味がありません。大西洋憲章では、第二次世界体制を遂行するに当たっての両国の基本的な合意事項が明記されていました。太平洋憲章は、枠組みの名前だけで中身が”からっぽ”では、各国の疑心暗鬼を招くのみとなるのではないかと思うのです。

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