時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

皇室典範改正問題―解き難いジレンマ

 野田政権の成立とともに、皇室典範改正問題が、再び浮上するようになりました。改正に関する政府の説明は、皇室の安定化に終始しているようですが、この問題、皇室の血統と正統性に関わるジレンマを考えれば、簡単には結論を出せないと思うのです。

 国民の多くが天皇を崇敬し、国家統合の象徴として尊敬するのも、ひとえに神武天皇から繋がる皇統を継承しておられるからです。天皇の正統性は、血統によって支えられているのであり、これは、誰も否定しえぬことです。しかしながら、民間から妃を迎える事例が一般化しますと、天皇の血統と正統性との間には齟齬が生じます。代を重ねて血統が薄まるほどに、天皇の役割を支える正統性が、脆弱化してしまうのです。このことは、国民は、以前ほどには、皇室を神聖視しなくなることを意味しています。皇別氏族に祖先を遡る日本国民も多数おりますので、皇室の自由結婚を許せば、やがて、皇室と国民との間の血統上の差はなくなる一方で、天皇という地位だけが、法律によって保障されるという状況に至ってしまうのです。外国人の血を引く天皇も誕生する可能性があるのですから、日本国民は、将来、厳しい判断を迫られることにもなりかねません。

 しかも、女系天皇をも認めるとなりますと、この速度は、二倍に速まります。皇室の安定性を考えるならば、この問題をも直視すべきであり、皇室典範の改正には、婚姻の条件付けを含めた議論は、避けて通れないのではないかと思うのです。

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