時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

外国人参政権教科書問題―参政権は政治的権利

 福岡県では、外国人参政権の否定は差別に当たるとする記述を含む中学公民の教科書の採用について、教育委と採用を決定した学校を相手取り、採用取消を求める裁判が起こされるそうです。この問題、憲法が”権利”を分類していないことにも原因があると思うのです。

 日本国憲法では、第3章の国民の権利及び義務において、国民の権利が羅列されています。他の諸外国の憲法を見ますと、政治的権利、社会的権利、経済的権利といった区別を設けている国も少なくなく、権利の性質の違いに即した扱いをしています。基本的人権と呼ばれ、外国人にも対しても保障すべきと国際法が要請しているのは、生命、身体、財産に関する権利であり(主に社会・経済的権利…)、この種の権利には、確かに普遍性が認められます。一方、政治的権利については、外国人に対しても普遍的に認めますと、外国人支配や内政干渉等の問題が起きますので、基本権とは性質が異なっています。参政権が、国民固有の権利と称されるのは、国家との間の政治的な権利・義務関係を基礎としているからであり、国家の成員にのみ参政権が認められるということは、至極、当然のことなのです。国際法においても、民族自決権を原則として認めているのですから、外国人に参政権を与えないとする措置は、差別ではありません(地方といえども、国家的な権限がある…)。

 権利の性質の違いを理解しませんと、普遍的な基本的人権の尊重名の下で、国民の固有の権利までもが侵害されるとも限りません。この意味においても、当然の区別を差別と断定している中学公民の記述は、誤っていると思うのです。

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