時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

自民党は日本の投資立国化案の再考を

 自由民主党は、次期総選挙の準備として、政策綱領の素案を作成中とのことです。その素案の中に、俄かには信じられないような政策方針を発見し、わが目を疑いました。それは、”貿易立国から投資立国への大転換”です。

 投資立国となる、ということは、国内でのもの造りを諦めて、日本経済の重心を、金融業に移すと言うことです。その前提には、我が国の金融部門が、国際的な競争力を備えていることが必要なのですが、ウォール街やシティに匹敵する金融街は、日本国に存在していません。しかも、この分野においても、巨額の外貨準備を積み上げている中国マネーの進出著しく、製造業と同様に、中国の後塵を拝する可能性があります。また、金融業に携わる就業者人口は、それほど多くはなく、製造業で発生した大量失業を吸収できるとも思えません。金融に関する専門知識を要しますし、しかも、コンピューター取引の増加やIT化により、むしろ、人員を削減する傾向にあるからです。加えて、金融依存では、一度、リーマンショックのような危機に直面しますと、経済そのものが沈没する可能性もあります。アメリカやイギリスでは、この反省から、製造業重視への舵を切り替えています。

 保守政党である自民党が、貿易立国、そして、それを支える技術立国としての自国の強みを理解せず、安易に金融頼りの方向に向かうのでは、保守層の指示を失うことにもなりかねません。まだ素案段階とのことですので、自民党は、この方針を撤回すべきではないかと思うのです。

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