時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

自民党憲法改正案と二つの保守の流れ

 自民党憲法改正案は、保守層を取り込むため、復古的な色彩が強いとも評されています。天皇の地位につきましても、改革案では元首とされているようですが、ここで一旦立ち止まって、日本国の保守というものについて考えてみる必要はありそうです。

 19世紀のフランスの政治状況を観察しますと、保守、すなわち右派と呼ばれた人々も、幾つかの党派に分かれていたようです。必ずしも、革命以前の王政への復帰を求める王党派のみならず、ナポレオン体制への復帰を掲げるボナパリストも存在していたそうです。翻って日本国を見てみますと、我が国の保守も、明治体制への回帰を理想とする人々と、明治以前の長きにわたる歴史を踏まえた上で保守を唱える人々に分けることができるかもしれません。そして、両者の間では、天皇の位置付けに著しい違いがあるのです。前者は、権威と権力の一元化を是としますが(政祭一致)、後者は、権威と権力の分離を基本的な形態と捉えるからです(政祭分離)。前者の立場からしますと、天皇は元首ということになりますが、後者からしますと、天皇は最高位の祭祀長ということになりますので、立憲君主制に倣って、敢えて元首化する必要は感じないことになります。

 天皇を元首と位置付けますと、明治体制回帰派の保守層からは喝采を浴びるかもしれませんが、後者の保守層の支持は逃すかもしれないと思うのです。

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