時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

泉佐野市―公権力は売却できるのか

 泉佐野市の市長が、市の名称の命名権を売却する方針を示したことが、ネット上でも議論を呼んでおります。この提案の問題点の一つは、売却の対象としている命名権は、公権力であると言うことです。

 地方自治体の名称に関する権利は、地方自治法でも認められた公権力の一つです(従来の名称を尊重すべきであるが、変更もできる…)。地方自治体の公権力は、その地方に住む人々のために使われるべきであり、もし、これを売り渡すことができるとすれば、一部であれ、全住民に関わる権力を売ることを認めることになります。一旦、売買契約が成立しますと、もはや、地方自治体側は、買い取った側が決めた名称について、何らの権限も行使できません。その名称に住民の多数が不満であり、強硬に反対しても、権利を売ってしまった限り、買い取り側が付けた名称に従わざるを得なくなるのです(非民主的…)。このことは、住民の意向と地名が、切り離されてしまうことを意味しています。

 果たして、この状況、望ましいことなのでしょうか。付けられた名称によっては、他の地方への移転を考える住民も現れるかもしれません。地方自治体の命名権は、住民から託された公権力の一部であることを、忘れてはならないと思うのです。

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