時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

財政悪化を招く日中韓の国債持ち合い

 財政問題が、ヨーロッパを揺るがしている矢先、アジアでは、日中韓が、国債の持ち合いを進めるそうです。経済関係の協力強化を目的として掲げていますが、財政のモラルハザードを引き起こす可能性もあるのではないかと思うのです。

 政府は、国債を発行するたびに、引き受け手の心配をするものです。購入者がいなくなりますと、国債が消化できず、財政不足となると共に、国債の利上げや国債価格の下落を招くからです。国債の消化に苦労する状態にあって、外国政府が、国債の買い手として現れたとしますと、政府にとりましては、歓迎すべきことかもしれません。しかしながら、新たな買い手の出現は、財政規律を緩め、財政再建を遅らせることにもなるかもしれません。まだまだ国債を発効しても、大丈夫と…。この点から見ますと、今回の国債持ち合いの合意は、財政危機の裏返しである可能性さえあります。つまり、三国のうちのいずれか、あるいは、全てが、既に、国債の安定的な消化が難しくなっているかもしれないのです。

 三国とも、購入費は、一般会計ではなく、特別会計から支出されるのでしょうが、外貨準備を迂回的に財政に回す手法ともとれます。また、国債は、”ばらまき政策”の財源ですので、国債の持ち合いが、経済成長に繋がるとも思えません。迂闊な国債の持ち合いは、むしろ、財政危機を深めるのではないかと思うのです。

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