時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”領土問題はない”に潜む問題点

 尖閣諸島については、政府は、中国が領有権を主張し始めた70年代以来、領土問題はないとする立場を堅持してきました。領土問題があると認めた場合、自国の領有権の主張が揺らぐと…。しかしながら、事態が緊迫している以上、もう一度、この基本的立場について考えてみる必要があるのではないかと思うのです。

 一国が、たとえ領有権問題はない、と言い張ったとしても、他国からクレームが付けられたり、あるいは、他国が、国内法で自国に編入してしまった場合には、事実上、既に紛争化していることになります。尖閣諸島の場合には、1971年に日本政府に対して中国からクレームが付き、1992年には、領海法で、尖閣諸島を自国の領土と定めてしまいました。竹島の場合は、逆に、日本国政府が、李承晩ライン設定以来、常に韓国に対して、竹島の領有権を主張しています。常識的に考えますと、自国が合法的に領有してきた領域に対して、不当な言いがかりや不法占拠を受けた場合、もちろん、それらを侵略として実力で排除する権利はありますが、自らの合法性を証明したうえで、相手国にお引き取り願うのも有効な方法の一つです。ところが、”領土問題はない”の一点張りでは、この自国の合法的領有証明の機会が失われてしまうのです。民事裁判には、所有権確認訴訟がありますが、領有権についても、こうした証明ができれば、鬼に金棒です。尖閣諸島竹島も、領有権証明ができるのですから、司法機関にお墨付きをもらうのが、最も平和的で合法的な手段と言うことになります。

 ”領土問題ない”を堅持することが、自らの政策手段を狭めてしまい、永遠の棚上げか、武力解決しか道を残さないとなりますと、解決する問題も解決しません。基本的立場を変えることには、英断を要しますが、自らの領有権を否定するわけではありませんので、日本国政府は、方針転換を検討してもよいのではないかと思うのです。

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