時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

泉佐野市命名権売却―反対解釈が国を蝕む

 当初は、アイディア倒れかとも思われたのですが、財政難に苦しむ大阪の泉佐野市が、遂に、市名の命名権の公募を開始したと報じられています。とことで、地方自治体が、勝手に命名権という権利を創設し、売却することは、許されるのでしょうか。

 法の解釈には、反対解釈という曲者があります。それは、法文の反対を推測して、肯定するという手法です。例えば、”地方自治体は、命名権を創設し、売買してはならない”という禁止の規定がない場合
、法の規定がないならば、許されると解釈するのもまた、一種の反対解釈です。この手法は、外国人地方参政権に関する最高裁の判決にも使われており、また、近年、国籍条項を法文に加えるようになったのも、本末転倒の反対解釈が蔓延ってしまった結果でもあります(本来、国の法律は、当然に国民を対象としているにも拘わらず、日本国民と明記していなければ、外国人も対象となるとする解釈…)。泉佐野市の場合も、地方自治法に、命名権の売却に関する記載はなく、名称については、”従来の名称による”とされており、しかも、変更に際しては、条例で定めるとされています。命名権の内容については詳しくは分からないのですが(名称そのものの変更?)、こうした行為が許されるとしますと、禁止条項がないことを理由に、どのような権利や権限も創設できることになってしまいます。憲法地方自治法など、公権力について権限の内容や範囲を定めている法律は、基本的には、反対解釈をしてはならないのではないでしょうか。

 一旦、命名権が売却された以上、地方自治体といえども、購入者の決定に従わざるを得なくなります。権利者によって、住民が赤面するような名称がつけられてしまった場合、住民側は、拒否できないのですから、民主主義にも著しく反していると思うのです。

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