時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「人権委員会設置法」第2条―恐るべき禁止令

 現在、衆議院には、「人権委員会設置法案」と「人権擁護委員法の一部を改正する法案」が提出されています。これらの政府提出の法案は、審議入りが断念されたとも報じられていますが、「人権委員会設置法」の第2条を読みますと、その意図の恐ろしさに愕然とさせられます。

 本法律案の核心となる条文ですので、全文を掲載しますと、以下の通りです。

「何人も、特定の者に対し、不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為(以下「人権侵害行為」という。)をしてはならない。
2 何人も、人種、民族、信条、性別、社会的身分(出生により決定される社会的な地位をいう。)、門地、障害(身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害をいう。)、疾病又は性的指向についての共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として政治的、経済的又は社会的関係における不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為をしてはならない」

 この条文、要約しますと、”ある特定の集団に属している人の出自を明らかにしてはならない”ということになります。つまり、出自開示禁止令なのです。刑法でさえ、「…した者は、…の刑に処す」という書き方をしており、「…してはならない」という禁止命令の形態ではありません。極度の禁止表現も然ることながら、この条文からは、執念とも言うべき出自隠しの意図が読みとれるのです。このことは、本法律が、特定の集団のために制定されることを、如実に表しています。

 本法案は、出自隠し法とでもいうべきなのですが、人権侵害を人権委員会に申し出ること自体が、出自を明らかにすることになるのですから、この法案は、矛盾してもいます。この他にも、本法案には、多くの欠陥が見られます。こうした隠蔽目的の法律こそ、国民監視体制の導火線となるとともに、犯罪や社会悪の隠れ蓑となると思うのです。

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