時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

スポーツと体罰-能力主義に徹しては

 桜宮高校のバスケット部に続いて、全日本女子柔道でも、代表監督による船首に対する体罰事件が表沙汰になり、辞任劇にまで発展しているそうです。柔道と言いますと、礼に始まり、礼に終わる競技のはずなのですが・・・。

 そもそも、躾に使われるならばまだしも、スポーツに”罰”という言葉が使われることには、どこか、違和感を感じます。選手が、他者を害するような”罪”を働いたわけではなく、指導通りに体を動かすことができなかったり、上手にプレーできなかったことが、罰せられる理由とは思えないからです。体罰と言うよりは、むしろ、私的制裁、リンチ、暴行といった言葉の方が、本質に近いのかもしれません。体罰を肯定する意見もあるそうですが、事件に発展するほどエスカレートする背景には、スポーツらしからぬ、能力主義の軽視があるのではないかと思うのです。報道によりますと、桜宮高校の場合には、早稲田大学への推薦入学がかかっていたからこそ、自ら命を断った生徒さんは、監督の体罰に耐えねばなりませんでした。全日本女子柔道もまた、代表選手に選ばれるためには、体罰に耐え忍んでも、監督からの高評価や推薦を得る必要がありました。両者の状況は似通っており、どちらも、選手の将来が”人質”にとられているのです。

 こうした問題を解決する一つの方法は、スポーツマン精神に立ち戻って、能力主義に徹することです。大学のスポーツ推薦入学については、大学側が、能力を図る公平な選考試験を実施すれば、推薦をもらう必要はなくなります。また、柔道にしても、代表選考大会を実施し、自動的に優勝者を代表とすれば、パワハラが蔓延る余地はなくなります。オリンピックの柔道の選考については、かねてより公平性に疑問が投げかけられてきましたが、制度改革を行えば、選手も伸び伸びとスポーツに打ち込むことができますし、真に強い選手が、代表に選ばれることになります。そして、能力主義の制度が実現すれば、人間関係でどろどろしてしまったスポーツ界に、再びフェア・プレーの精神が吹き込まれると思うのです(もっとも、こうした問題は、一般社会にもあるのですが…)。

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