時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

精神障害者雇用義務付けのリスク

 先日、厚労省が、精神障害者の雇用を企業に義務付ける法改正を行う方針を示した、とする報道がありました。しかしながら、この法改正案、どこか、現実離れしているように思えます。

 改正案の内容は詳らかではないのですが、雇用義務付けが、採用時における新卒に適用されるとしますと、応募者は、履歴等の書類に精神障害を申告する必要があります。しかしながら、精神障害の診断は、通常の疾病よりも難しく、医師の診断書があっても、正確さに欠けます。精神障害があった方が就職に有利となりますと、障害を偽装する不心得者も現れないとも限りません。また、精神障害は、加齢や職場環境によって発病することもあり、先に精神障害者雇用枠が埋まってしまいますと、後から発病した人は、この制度の恩恵を受けられなくなります。そして、より根本的な問題は、万が一、精神障害に起因して損害が発生した場合、企業のみが、全面的に責任と負担を強いられることです(精神障害がある場合は、責任能力なしで免責になる…)。このため、企業は、万が一のリスクに備えて、精神障害者の他に、カウンセラーといった専門家を雇用するなどの対応を迫られます。もしくは、国で保障制度を設けるか(義務付けならば、国にも責任が…)、企業が、保険に加入するしかありません。そして、他者の命に関わるような事件が発生しようものなら、後々、制度導入そのものが間違っていた、という議論にもなりかねないのです。

 法改正は、精神障害者の方々を救済するために検討されたのでしょうが、良かれと思って導入した制度でも、被害や損害が頻発し、混乱をきたす可能性も否定できません。このように考えますと、法改正には、相当に慎重であるべきと思うのです。

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