時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

非嫡出子の相続権問題-家族法は家族を保護しているのでは

 報道によりますと、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と定める現行の民法の規定について、今後、最高裁において、違憲の判決が下される可能性があるそうです。日本国が、嫡出子と非嫡出子の間の平等化に向けて、国連の勧告も受けていることも、この動きに影響を与えているのかもしれません。

 民法典は、大きく分けますと、社会関係や商取引等に関わる前半部分と、家族秩序に関わる後半部分(民法典の親族法と相続法)とから成り立っています。この両者には違いがあり、前者は、個々人の対等性を基盤に、社会・経済秩序を律することを目的とする一方で、後者は、よりプライベートな領域である家族秩序を対象としています。つまり、後者は、家族内部の秩序を法で律し、合わせて、法的な家族を保護することを目的としているのです。もし、家族という法的な枠組みを保護する必要がなければ、そもそも、家族法というジャンルは存在しないはずです。法の前の平等が徹底できるのは、前半部分のみであり、家族法の部分は、むしろ、自然秩序として平等にはなり得ない家族関係を前提としているのです。そこで、この観点から非嫡出子の相続権問題にアプローチしてみますと、平等化は、法的に家族を保護するという家族法の役割には反していると思うのです。もし、この役割を無視するとしますと、法律上の配偶者と内縁の配偶者との間に、相続権に差を付けることも、憲法が定めた法の前の平等に反することになります。

 常々、日本国は、”これが、国際社会の常識”と言われてしまいますと、つい、その方向に向かってしまうのですが、家族法には、その本質からして平等原則には馴染まないという特質があります。最高裁の判決の行くへは判りませんが、相続分に違いを設けたとしても、必ずしも憲法違反には当たらないと思うのですが、いかがでしょうか。

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