時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

危険な思考停止を誘う村山談話

 1939年8月23日、ナチスドイツが、突如、ソ連邦との不可侵条約を締結したことを受けて、”欧州情勢は複雑怪奇”という有名な言葉を残して、平沼騏一郎内閣は瓦解しました。この言葉には、目まぐるしく変化する国際情勢に翻弄された日本国の苦悩が垣間見られます。

 その後、ドイツとの同盟交渉を再開した日本国は、日独伊の三国同盟へと向かいますが、この時点では、ソ連を加えた四国同盟さえ検討されており、連合国と枢軸国のそれぞれのメンバーは未だ流動的な状況にありました。戦前の対立構図は3つ巴であったのですから、組み合わせもまた、複数想定されたのです。村山談話では、第二次世界大戦は、日本国の”侵略戦争と植民地支配”とのみ断定しておりますが、中国情勢についても、”侵略戦争”一辺倒では割り切れない部分があります。また、アジアにおいても、フィリピンやミャンマービルマ)では、日本国の軍事占領下において独立が達成されておりますので、植民地支配とは逆の独立支援の側面も見逃すことができません(その後、一波乱も二波乱もありますが…)。第二次世界大戦とは、村山元首相が理解するような単純なものではなく、現実には、様々な対立要素が複雑に絡み合った結果として、全世界を巻き込む戦争に発展したのではないかと思うのです。

 このように考えますと、村山談話は、歴史の一面しか語っておらず、戦争に対する理解を、ステレオ・タイプ化された表層的なものに貶めてしまっております。国際情勢が刻一刻と変化している今日こそ、より複雑な戦争の要因分析が必要とされているのではないでしょうか。村山談話は、21世紀の戦争理解としては単純に過ぎ、危険な思考停止を誘っていると思うのです。

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