時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

奇妙な永住資格拡大案-計画経済風味

 本日の日経新聞の一面には、新たな永住権制度の導入に関する記事が、堂々と飾られておりました。職種は限定するものの、高度人材については、3年滞在すれば、日本国の永住権を付与するというものです。

 この新制度では、永住者は、永住資格取得後も、配偶者の就労が認められるとともに、親や家政婦の帯同をも許可されます。滞在期間を5年とする現行の「高度人材ポイント制度」では、平均年齢が34.5歳なそうですが、この点を考えましても、新制度、おかしな点ばかりです。そもそも、本人の年齢が、30代であれば、親も現役世代であり、親の呼び寄せが然したるメリットになるとも思えません。また、たとえ夫婦共働きであっても、30代で家政婦を雇用できるほどの所得を得ることは、現実には困難です(経営者のみが可能?)。また、高度人材として永住権を得た永住者が、離職した場合にはどうなるのでしょうか。日本国の永住資格制度では、永住資格取得後の見直しについての規定がないという問題点があります(特別永住資格も含めて見直すべきでは…)。

 新制度導入の理由は、昨年発足した現行の制度にあって2000人を目標に設定したものの、認定者が434人にとどまったためと説明されています。永住資格拡大政策は、2020年までに直接投資残高を現在の2倍である35兆円にするための一環とのことですが、どこか、計画経済風味があります(数値目標達成のためなら、国民の声は無視…)。高度人材が長期滞在を促すことが目的ならば、ビザの有効期限を延長するなど、別の方法もあるはずです。そして、より根本的には、政府は、外国の人材に頼るよりも、自国民の高度人材育成にこそ、熱心に取り組むべきではないかと思うのです。

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