時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ヘイトスピーチ判決の支離滅裂

 本日、京都地方裁判所は、在特会に対して原告である朝鮮学校に対する賠償を命じましたが、判決において、「人種差別撤廃条約」を根拠の一つとして上げたそうです。しかしながら、この判決、支離滅裂としか言いようがないのです。

 「人種差別撤廃条約」条約は、締約国の政府に義務を課すものであって、二元論をとる我が国では、条約そのものを法源として個別の訴訟に直接に適用することはできません。仮に、国内で人種差別事件が起きた場合、救済措置を講じたり、被害者に対して公正かつ適正な賠償又は救済を当該裁判所に求める権利を確保するのは、政府の役割なのです(第6条)。このため、当条約の内容を実現するためには、刑法を改正するなど、国内法化を要します。ところが、日本国政府は、加盟に際して第4条(a)(b)を留保し、犯罪化に関する義務を免除しているのです。もし、当条約を根拠に、人種差別を理由に提訴するならば、その原告となるのは国家たる北朝鮮政府となります。しかしながら、北朝鮮は、当条約に加盟していません(提訴権がない…)。むしろ、韓国は締約国ですので、過激な日本人差別と日本叩きについて、日本国政府は、当条約に基づいて、韓国政府を相手とした提訴を検討してもよいのではないかと思うくらいです。もうひとつ方法としては、当条約第14条に定めた個人通報制度もありますが、この制度に関しても、日本国は、第14条不宣言国です(個人や民間団体…は、委員会に通報できない…)。さらに、朝鮮学校側は、当条約が禁じたアパルトヘイトや隔離政策を自ら実行しているようなものです。しかも、当条約は、国籍による区別は適用外としています。

 以上に述べたように、在特会ヘイトスピーチ訴訟において、判決の根拠として人種差別撤廃条約を持ち出すことには無理があります。当判決では、刑法上の名誉棄損罪も挙げておりますが、在日韓国・朝鮮人が絡む判決が、常に支離滅裂となる現状は、日本国の法体制の危機でもあると思うのです。

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