時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

報復論による集団的自衛権行使反対の非論理性

 先日、ブログ記事の中で、”やられたらやり返されることを思い起こせ”といったタイトルの記事を見つけました(タイトル名は正確ではないかも知れません…)。閲覧者やコメント数も多く、なかなかの人気記事のようでしたが、その内容、どう考えても非論理的で説得力に乏しいのです。
 
 記事の要点を纏めれば、”もし、日本国が、集団的自衛権に基づいて軍事力を行使すれば、相手国も、必ず、報復してくるので、よく考えてみた方が良い”というものです。つまり、報復を受けないためには、集団的自衛権を行使すべきではない、と主張しているのです。相手を攻撃すれば、反撃を受けることは当然のことなのですが、何故か、この記事の筆者は、日本国が最初に攻撃を仕掛けると想定しています。しかしながら、先制攻撃を行うのは、日本国側とは限りませんので、この見解では、日本国が外国から攻撃を受けるケースが無視されています。現実には、後者の確率の方が、俄然、高いのですから、結果的には、外国から攻撃を受けても、日本国は集団的自衛権を行使できないという結果を招いてしまうのです。可能性の一つを予め意図的に消去して、結論を導いているのですから、この主張は、非論理的と言わざるを得ないのです。
 
 攻撃されても反撃されないのであれば、侵略を狙う国は、率先して先制攻撃を日本国に仕掛けてくることでしょう。この報復論は、中国…といった、武力行使を示唆する拡張主義の国に対してこそ、説くべきではないでしょうか。
 
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