時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

危機感共有は日中ではなく中国と福田元首相なのでは?

 昨日都内で開かれた講演会で、福田元首相は、中国の習主席との極秘会談を認め、”日中は危機感を共有している”と述べたと報じられております。
 
 極秘会談という方法自体が裏取引を連想する”秘密外交”を髣髴させるのですが、真の”極秘”であれば、自らその存在を明かすことはありませんので、秘密主義と権威主義の衣を纏うことが大好きな中国側による、日中関係の改善を図る上での一種の”演出”なのでしょう(公開は了解済み…)。福田元首相にとりましても、自らを中国のトップと会談できる”大物政治家”に見せることができますので、この会談は、両者の思惑が一致した結果になります。それにしましても、日中の危機感共有とは、あり得ることなのでしょうか。特に尖閣諸島をめぐっては、日本国からしますと、中国は仮想”侵奪者”であり、日中関係は、身構える防衛側と領土を狙う侵略側の構図となります。通常、防御側と攻撃側が危機感を共有することはあり得ず、危機感を抱くとすれば、それは、防御側、つまり、日本国側のみのはずです。
 
 日中関係の改善が可能であるとすれば、中国が行動様式を改め、尖閣諸島の領有権主張を引き下げ、国際法に従って行動するに至ることです。現状のままで危機感を共有するとしますと、それは、日本国と中国ではなく、中国と福田元首相個人なのではないでしょうか。
 
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