時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

「進化論」から見えてくる人類共通の脅威:『Nature』記載の動物行動学に関する研究成果が示唆する類人猿の悪しき特徴を残す人々の存在

  今日は、古代・中世史研究家の倉西裕子が記事を書かせていただきます。先週の本ブログの記事にて、「チンパンジーは共食いをする」というチンパンジーの悪しき特徴について指摘させていただきましたが、このような類人猿の凶暴性をめぐりまして、去る9月18日に、英科学雑誌の『Nature』にて、動物行動学に関する研究として、以下の興味深い記事が掲載されておりました。
 
「ヒトに最も近縁な動物であるチンパンジーボノボの研究は、ヒトの攻撃行動の進化の解明に大きな影響を与えてきた。しかし近年、チンパンジーに見られる暴力は主として人為活動の結果であるとする「人為的影響仮説」が唱えられ、チンパンジーボノボでの研究の妥当性に疑問が投げかけられている。今回、アフリカ各地のチンパンジーボノボに関する研究のメタ分析が行われ、チンパンジー同士の攻撃が、資源や配偶相手を獲得するための適応戦略の正常な産物として予測されるものであり、ヒトの存在の有無は関係していないことが明らかになった。(インターネットの『Nature』サイトより引用)」
 
 いささか難解な記事ですが、この記事では、”観察されるチンパンジーの凶暴性は人間の影響である”とする通説を覆しています。京都大学でも、同じような結果が公表されているようですが、昨今のチンパンジーの行動に関するこのような研究成果は、人類のなかには‘凶暴’な人々がいる原因を説明しているようです。
 
『Nature』記載の論文によりますと、‘凶暴性’なるものは、類人猿の本能的特徴であることになります。人間は、チンパンジーから直接に進化したわけではありませんし、ボノボといったより協調的な行動を見せるとされる類人猿もおりますが、この研究から、人類の一部の人々に観察される‘凶暴性’もまた、‘凶暴性’という類人猿の悪しき特徴が消滅することなく、そのまま残した結果であることが推測されます。
 
すなわち、人類にも観察される‘凶暴性’の根源はどこにあるのか、という問題をめぐりましては、「平和的類人猿が進化して凶暴な人類になった」とする説は間違いであり、「人類のなかには、凶暴な類人猿の悪しき特徴を残しながら進化した人々が存在しており、このような人々の行為や思想によって、あたかも人類全体が凶暴であるかのように錯覚されている」というのが、正しい説となりそうです。
 
このように考えますと、人類は、極めて困難な課題に直面していることになります。チンパンジーをいくら教育しても社会生活を営める人類にはならないように、進化の過程で生じた問題は、教育によっては解決しない可能性が高いからです。いな、むしろ、人類にとっての最大の脅威は、‘凶暴性’を残した人々によって世界が支配され、地球が‘猿の惑星’となってしまうことであるのかもしれないのです。
 
(続く)
 
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