時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

危ない地方自治体の民間委託シフト

 本日の日経新聞の記事に、東京都の足立区といった地方自治体が、戸籍、国保、会計などの分野において民間委託を進めているとの記事がありました。戸籍の管理といった極めて重大な業務を民間に委託していることになりますが、大丈夫なのでしょうか。
 
 地方自治体の言い分によりますと、民間委託にシフトすれば、民間のノウハウも取り入れてサービスを充実させると同時に、経費において1~2割の削減ができるとのことです。しかしながら、民間企業に、地方自治体の業務に関するノウハウがあるとは考えられず、特定の事業者に委託しなくとも、最新のシステムを導入すれば、事業の効率化は図れるはずです。むしろ、長年、公共サービスの事業を担ってきながら、自らで効率化を図ることができないとしますと、職員の能力が問われることになります。しかも、公共サービスの分野は、一旦、特定の事業者に委託されますと、他業者との競争が働きませんし、特別なインセンティブが働かない限り、サービスが向上されるとも思えないのです。また、経費削減につきましても、地方自治体の所得水準は一般の給与所得者よりも高いのですから、まずは、人件費の削減に努めるべきです。民間委託によって経費が削減されるとしますと、単に、同じ仕事を民間企業が安い人件費で請け負っているに過ぎません。最悪の場合には、NHKのように、地方公務員が暇を持てあます一方で、下請けとなった委託事業者が低賃金で働かされることにもなります。
 
 戸籍、国保、会計の分野ともなれば、民間委託事業者による情報漏洩の可能性もあります。安易な民間委託は、情報管理上のリスクとなると共に、地方自治体の堕落を招くのではないかと思うのです。
 
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