時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ノーベル賞受賞に見る日本国の強み

 本年度のノーベル物理学賞として、青色LEDを開発した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の三名の日本人研究者の方々が選ばれました。日本国の科学技術力がまだまだ健在であることを内外に示すこととなり、STAP細胞事件で揺れる中、久方ぶりの朗報となりました。
 
 ところで、日本国のノーベル賞受賞には、ある特徴があるように思えます。アメリカやヨーロッパ諸国の受賞は、世界トップクラスの大学や研究機関に所属する研究者が”取るべくして取った”といった印象が強いのですが、日本国の場合は、幅広い層に受賞者が分散する傾向にあることです。出身校を見ますと、むしろ最高学府と称される東大の受賞者はそれほど多くはなく、旧帝大のみならず、全国の国公立大学にも及んでいますし、企業もまた重要な研究の場となっていす。しかも、主流から外れたところで忍耐強く研究を積み重ね、成果を上げた方々が多いのです。受賞者の人となりもまちまちであり、研究者の鏡のような方もおられる一方で、良く言えば一匹狼、悪く言えばエゴイストのような方も見受けられます。
 
 日本国の社会は、兎角に画一的で権威主義的であると評されておりますが、ノーベル賞の受賞状況を見る限り、意欲と着想力さえあれば様々な場所においてチャンスがあり、異端を許す緩みもあることが分かります。改善すべき点がないわけではありませんが、教育や研究の場の多様性とそれを支える厚い中間層の存在こそが、今後とも維持すべき日本国の強みなのではないかと思うのです。
 
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