時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

河野談話の問題7-慰安婦訴訟への言及

 河野談話の最後は、「なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい」という一文で締めくくられております。第7番目の問題は、慰安婦訴訟への言及です。
 
 慰安婦訴訟とは、この談話に先立って、元慰安婦によって日本国の裁判所に提訴されたものです。河野談話の発表時点では、判決は確定しておりませんが、何れの判決も、請求権の消滅を以って全て原告の訴えを棄却しております。地裁レベルの判決文の中には、元慰安婦の主張に対して人権侵害の観点から理解を示し、日本国政府に対して立法や行政措置を求めるものもありましたが、何れも、慰安所の存在やその待遇を問題としており、政府の命による日本軍による強制連行を認めたわけではありません。実際の訴訟の数は9件ほどですが(この談話発表当時はわずか3件…)、河野談話では、最後に”訴訟”と言う言葉を添えることで、読者に対して、日本国が、国家犯罪の廉で大規模な訴訟が起こされているとする印象を与えているのです。
 
 訴訟のみならず、河野談話の作成過程の再検証や朝日新聞社による記事の訂正によって、河野談話の公表当時と現在とでは、状況が大きく変化しております。およそ20年の月日が経過し、官民における検証も進んだことを考慮しますと、河野談話の見直しは、やはり必要なのではないかと思うのです。
 
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