時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日中合意文書-玉虫色は外交のプロか?

 ディプロマティック(外交的)という言葉は、諸外国においても、言葉巧みに相手を動かし、自己の目的を達成するプロ的な能力を評価する際に使われています。昨日公表された日中合意文章もまた、両国で異なる解釈がなされる余地がある点において、極めて精巧に練られた外交的な文書とする評もあります。
 
 しかしながら、歴史を振り返りますと、外交文章の巧妙さは、相手国を”騙す”という点において、そのテクニックを如何なく発揮してきました。植民地主義の時代を思い至るまでもなく、条約には、常々、後において不利となるような仕掛けが潜んでおり、騙されたと気づいた時には、”時すでに遅し”の状態に陥ります。このため、しばしば倫理的な批判を受けてきたのですが、21世紀という時代にあって、”玉虫色”の外交文章が、賞賛に値するのかと申しますと、これには大いに疑問があります。何故ならば、相手国を騙さないまでも、双方の誤解を招いた入り、将来的には紛争の要因を残すことになりかねないからです。しかも、外交的なテクニックは、最悪の場合には、自国民をも騙すかもしれません。プロもまた、時代と共に求められるテクニックは変化するものですので、外交もまた、21世紀に相応しい交渉や合意の仕方があるはずです(首脳会談に先立って、合意文書を先に発表する方法にも問題が…)。
 
 日中合意文書についても、こうしたリスクは既に指摘されております。得体の知れない人治の国ほど、相手国に隙を与えるような曖昧表現は回避すべきであり、正直実直な文章表現を試みるべきではなかったかと思うのです。
 
 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。