時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

村山談話の問題点-”侵略された植民地の侵略”

 今年は、第二次世界大戦から70周年に当たるため、安倍総理は、新たな談話の発表を予定しております。このため、村山談話についても関心を集めておりますが、この談話、第二次世界大戦を矮小化していると思うのです。
 
 村山談話は、第二次世界大戦とは、とりわけアジア諸国に対する侵略と植民地支配により多大な苦痛を損害を与えた戦争と断定しております。しかしながら、歴史の事実に照らしてみれば、正確には、アジアにおいて植民地体制を築いてきたイギリスやオランダなどの欧米諸国と戦ったのであり、侵略戦争とするならば、植民地支配を合法とする見解を前提とした、形式的な法律主義に基づく”侵略”となります(もっとも、第一次世界大戦後にあっては、民族自決主義が打ち出されていたので、過渡期とも言える…)。つまり、少なくとも、東南アジアについては、”侵略された植民地の侵略”という、複雑な状況となります(日中戦争は、侵略というよりも、内乱状態における軍事介入の側面が強いのでは…)。また、第二次世界大戦にあって、日本国は、占領行政を実施していても、植民地化は行っておらず、別問題であることは先日の記事でも指摘しました。村山談話の核心とも言える”侵略”も”植民地支配”も、あまりにも杜撰な表現であり、客観的な歴史の検証に耐えるとも思えません。
 
 村山談話は、第二次世界大戦を日本国による”侵略”と”植民地支配”として矮小化しておりますが、この戦争は、これらの二つの言葉に集約されるほど単純であったのでしょうか。
 
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